研究概要 |
1.症例対照 大腸癌罹患例1016例を集積し、除外規定により最終的に死亡例は121例、生存罹患例は709例確定し、それぞれ349人と、1916人(707例に対して)の条件を満す対照を選択し、その受診歴を同定した。 2.解析 死亡例のうち症状受診や精検未受診で有効性評価に不適切な12例とその対照を除いた109例の症例とその対照315人で症例対照研究の解析を行った。検診受診「あり」の「なし」に対する大腸がん死亡のオッズ比は過去1,2,3,4,5年以内の受診歴について、それぞれ0.33(95%信頼区間:0.13-0.84),0.53(0.27-1.07),0.54(0.28-1.04),0.64(0.36-1.15),0.52(0.27-1.01)と2年以上ではborderline significanceであったが1より低く、受診により大腸癌死亡のリスクが低下することが示唆され、逐年受診では67%の低下であった。 以上の結果がself-selection biasによる過大評価かどうかを検討するために、全罹患例とそれらの対照で症例・対照の受診歴「あり」の「なし」に対する大腸癌罹患のオッズ比を最終受診からの年数別に計算した。オッズ比は検診発見癌により検診直後に2.11と上昇した後降下し、再び上昇して最終受診からの4年で1.04(0.53-2.06),5年で1.03(0.48-2.21)と約1.0で推移した。このオッズ比は「あり」の群と「なし」の群の罹患率の比を近似すると考えられ、罹患率は受診群と非受診群でほぼ同じと示唆された。すなわち死亡リスクの減少が、self-selection biasによる見かけ上のものではないことが示唆された。 以前の症例対照研究(Int J Cancer 61,など)と併せたメタアナリシスでは年齢別のオッズ比が40代では0.72と高いのに比べ、50代以上では0.4と有意に低く、対象年齢は現行の40代より50代の方が有効性が高いと示された。
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