研究概要 |
運動習慣の獲得・継続に役立っ実践的介入方法を開発することを目的とし、1)行動医学理論モデルであるTranstheoretical Modelにもとづいた「運動行動変容の過程」尺度(POC)の新たな開発、および2)行動医学的手法を取り入れた集団ストラテジーに則った介入の層化無作為割付対照試験による効果の検討を行った。 1)POCの開発:45項目,11概念(プロセス)の質問紙を作成した。某社社員を対象に実施し、調査研究に同意が得られた1,287名(対象者全体の53.1%)を分析の対象とした。確認的因子分析の結果,11プロセスのうち項目数3つ以上の9プロセスにおいてCronbachのα信頼性係数は0.7以上であり,高い信頼性が示された。また、対象者の運動習慣のステージ(SOC)とPOC11プロセス各尺度得点との関連を検討したところ、すべての尺度得点において、SOCによる有意差が認められ(p<0.001),SOCが高いほど高得点を示し,尺度の妥当性が確認された。 2)介入効果の検討:規模と地域を考慮して、事業所単位で層化後、無作為割付を行い、介入事業所の社員(介入群)に対して、ポスター掲示および社内メールによる情報提供型の介入を、14回、6ヶ月間(1週間隔の集中的介入期間8週間を含む)行った。提供した情報は、身体活動・運動の健康影響や推奨されている活動量に関するもので、ベースライン評価時のSOCに応じて行動医学的技法を用いた情報を追加した。介入の前後で、SOC、POC11尺度得点、日常生活における身体活動量、加速度計による歩数の変化について検討したが、いずれの評価尺度も、介入群、対照群ともに有意な変化はなかった。 集団ストラテジーに則った介入は、情報提供型が多いが、SOCに応じた行動医学的技法を取り入れても、行動変容を起こすことは困難であった。今後、効果的な介入方法の開発が必要である。
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