研究概要 |
日本語版努力-報酬不均衡職業性ストレスモデル調査票を逆翻訳のプロセスを経て開発しその標準化を図った。以下の知見より,本調査票は,改良の余地を残すものの,日本人の就業集団を対象とするストレス調査票として十分に適用可能と思われた。 1.2万1千人からなる多様な職種におよぶ日本人就業者のデータを集約したデータベースを作成した。 2.属性別の代表値を集計した。Siegristらがストレス基準とする努力報酬得点比1より大なる割合は全体で8.3%(男7.9%,女8.9%)であった。 3.調査対象別・属性別の内的整合性は良好であった。3ヶ月の間隔をおいた再テスト法による安定性も確認された。 4.確認的因子分析により理論に沿った因子構造を認めた。 5.基準関連妥当性は,努力-報酬不均衡のストレス指標が種々の自覚症状や血清脂質と有意に関連していることから確認された。 6.弁別妥当性は,社会経済的属性別のストレス有症率より検討された。 7.経済的事由によりリストラクチャリングを余儀なくされた企業の従業員における追跡調査により,現実の組織変化に対応するストレス指標の良好な反応性が示された。 8.モデルの個人要因を測定するオーバーコミットメントと就業生活における個人のモチベーションとの関係を明らかにした。 9.項目反応理論に基づく解析により,尺度項目の良好な識別力を認めた。同時に,現行の尺度のコーディングでは誤分類による測定誤差が発生する可能性があるが,フォーマットを改良することにより,より正確な測定が期待できることも判明した。 10.項目反応理論を用いた異文化比較により,尺度の比較可能性を含めた妥当性を検証する必要性を認めた。 11.調査票の使用マニュアルをホームページ上に公開した(http://eisei.med.okayama-u.ac.jp/jstress/ERI/index.htm)。
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