研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)では慢性増殖性滑膜炎により骨・軟骨破壊が起こり高度の関節変形を来す。昨年度,滑膜組織培養によるin vitro骨破壊モデルを確立した。RA滑膜組織を誘導因子,支持細胞非存在下で特殊な表面加工した培養ウェルで培養すると滑膜組織よりリンパ球,紡錘形細胞とマクロファージ様細胞が遊離してくる。これらの細胞は増殖し,培養10-14日後よりHE染色でeosinophilicの細胞質を持つ多核巨細胞の集団が出現してくる。この培養系には多核巨細胞に加え滑膜細胞,マクロファージやCD4+Tリンパ球が混在し,RAにみられるパンヌスに類似しており,RA滑膜組織ではこのような巨細胞形成が6ヶ月まで持続する。巨細胞はtartrate-resistant acid phosphatase(TRAP)活性,vacuolar H+-ATPase, Vitronectin receptorが発現しており微細構造も,微絨毛様,破骨細胞ときわめて類似していた。また,アクチンフィラメントの特異的な分布から極性化していると考えられた。象牙片上で培養すると,強い骨吸収能を有していた。本培養系では,滑膜細胞が増殖,融合,極性化し骨吸収をきたす過程がみられ,RAの炎症性滑膜組織において滑膜細胞が破骨細胞に分化し,骨を破壊してゆく可能性が示唆された。 滑膜組織培養における破骨細胞形成の分子メカニズムを明らかにするため,まずRANK/RANKLによるシグナル伝達系の関与,炎症性サイトカインの関与を検討した。RA滑膜組織培養系にOPGやOPG融合蛋白を添加すると,破骨細胞の形成やハイドロキシアパタイト上の骨吸収窩の形成は約40%抑制された。一方,骨髄細胞や末梢血単球培養にM-CSF, RNKL加え破骨細胞を誘導する系ではOPGはほぼ100%抑制した。滑膜細胞からの破骨細胞誘導にはRANK/RANKLが関与しているが,それ以外の誘導メカニズムも関与している可能性がある。TMFα受容体融合蛋白によりTNF blcckingの効果を検討すると,TNF recptor II-Fc fusion proteinで骨吸収の有意な抑制がみられた。しかし,TNFreceptor-Iの阻害では骨吸収は抑制されなかった。TNF receptor IIやRANKL/RANKのブロックはRA骨破壊の抑制の戦略の1つと考えられる。 今後,IL-1の抑制やMCSF, VEGFの抑制が滑膜細胞から破骨細胞への分化にどのように影響しているのか明らかにしていゆきたい。
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