研究概要 |
【背景】日本においては表面型大腸腫瘍発見は一般的となっている。一方,アメリカにおいては「表面型大腸腫瘍は極めて稀か,存在していても臨床的重要性は乏しく大腸癌死亡には寄与していない」との見方がなされている。 【目的】アメリカにおける表面型大腸腫瘍の頻度と臨床的意義を明らかにする。 【対象と方法】米国テキサス州で前向きに表面型大腸腫瘍の頻度を検討した。盲腸到達後,右側結腸は表面型病変が疑われた場合にのみ,脾轡曲部から直腸までは全例で0.08%インジゴカルミンを撒布後に観察した。また,生物学的悪性度を評価するために得られた組織についてFHIT(fragile histidine triad),p53,ki67及びCD95の免疫染色を行った。 【結果】表面型大腸病変は本研究を行った211例中48例(22.7%)で発見された。表面型における癌の大きさは隆起型に比べて有意に小さかった(それぞれ10.75+2.7mm,20+2.9mmP<0.05)。表面型では隆起型に比べて腺腫の頻度は有意に高く(それぞれ88%,67%;P=0.03),また癌の頻度も表面型で有意に高かった(それぞれ6.1%,0%;P=0.042)。表面型腺腫においては同程度の大きさの隆起型腺腫に比べてFHITは有意に高くp53は有意に低かった。また増殖やアポトーシスのマーカーのKi-67及びCD95では両群に差は見られなかった。 【結論】色素撒布を併用するとアメリカにも高頻度に表面型病変が存在した。表面型病変では隆起型病変と比較して生物学的態度が異なっていると考えられた。表面型病変の臨床的意義を明らかにするためにはさらなる大規模な多施設による研究が必要である。
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