研究概要 |
PR-39はブタの小腸粘膜から精製されたprolineに富む内因性の抗菌ペプチドであるが抗菌作用に加えてproteoglycan型接着分子であるsyndecanの発現を誘導したり,また,白血球のP47phoxのSH3(Scr homology 3)dcmainに結合しNADPH oxidaseの活性を抑さえることやシグナル伝達分子であるP130CasのSH3 domainに結合しその局在を変えることも報告され多機能を有していることがわかった.我々はsyndecan familyのひとつであるsyndecan-1が肝細胞癌において転移抑制因子として働いていることを報告し(Int J Cancer 74:482-491,1997),PR-39遺伝子の肝癌細胞への導入がsyndecan-1を誘導し,その浸潤・転移を抑制し,さらにactin disorganizationを引き起こし細胞形態を変化させることを明らかにした(Brit J Cancer81:393-403,1999).さらに,我々は,activated k-rasでtransformしたmouse NIH3T3細胞においてPR-39遺伝子の導入がactin構築を変化させること,細胞増殖を抑制すること,MAP kinase活性を低下させること,およびPR-39がPI3 kinase p85aに結合することを明らかにした(Jpn J Cancer Res 92:959-967,2001).本研究で我々はk-rasの突然変異を持つマウス大腸癌細胞においてもmouse NIH3T3細胞と同様にPR-39による癌増殖抑制がin vivo, in vitroで起きることを明かとした.
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