研究概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)蛋白6種,C型肝炎ウイルス(HCV)蛋白7種,デルタ型肝炎ウイルス(HDV)蛋白2種が宿主肝細胞に及ぼす影響,特にinflammatory cytokine誘導につき,分子機構を含め検討した.HCVコア蛋白はNF-κB, AP-1, MAPK経路,p53の細胞内シグナル伝達系を活性化した.また,コア蛋白は主にNF-κB活性化を介してinflammatory cytokineであるIL-1β,IL-8のプロモーターを,p53活性化を介してp21プロモーターを活性化した.コア蛋白はIKKβ, TRAFを介してNF-κBを活性化し,p53と結合しそのDNA結合能を増強,hTAF_<II>28と結合しp53の転写活性化能を増強することでp53を活性化した. ウイルス肝炎の機序としてアポトーシスの関与も示唆される.HCVコア蛋白発現細胞では,caspase 3の活性化が抑制されており,Bcl-x_Lの発現が増加してた.コア蛋白はSREすなわちMAPK経路の活性化を介してBcl-x_Lの発現を増強し,それによりFasによる肝細胞死のシグナルをミトコンドリアにおいて抑制していることが明らかになった.また,HCV NS4AおよびNS4B蛋白が,非特異的に翻訳過程を阻害する可能性が示され,HCVが宿主の蛋白合成を阻害するtranslational shutoff機構を有していることが明らかとなった.これら蛋白が宿主細胞の翻訳を抑制することにより,持続感染に有利な働きをしている可能性がある.また,HDV Iarge抗原がSRFを活性化すること,HBx蛋白と共同して相乗的にSREを活性化することを見出した. ウイルス蛋白は様々な細胞内シグナルに影響し,ひいてはin flammatory cytokine誘導につながり,それが肝炎ウイルス感染における肝炎発症機序の一つであると結論される.
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