研究概要 |
多数の遺伝子の発現変化を一度の解析可能なマイクロアレイ解析をHCC遺伝子に適用して遺伝子発現の変化の解明を試みた。HCC部および担癌肝部より抽出したRNAを対象としてAtlas Human Cancer cDNA Array1.2を用いて解析を行なった結果、その癌部において80から発現高進を呈する遺伝子と41個の発現低下を呈する遺伝子が観察された。HCCにおける遺伝子発現の変化の多様性が示唆された。肝硬変部に観察された遺伝子発現の変化はHCC発癌の初期事象を考える上で重要であると推察した。また、B型及びC型肝硬変組織では発現亢進(【greater than or equal】2.0)を示す遺伝子はEphrin-A1,cytopastic dyneinlightchain(hdlc1),Cytochrome p450 reductase等があり、一方低下(【less than or equal】0.5)を示すものはAgrecan, Caveolin 1,Growth arrest-specific 1,NF-IL6, properdine P factor, retinol-binding proteinなどである。また機能の別の検討では、1)MAP kinase pathway-MAPK12,MAP4K1,MAPK3,EAK3,apotosis inhibitor 4 (survivin)等の活性上昇。2)CDC2,BUBIB/Mad3L等の上昇するMitosisの亢進。3)DNA fragmentation factor-45,IGF bindingproteinの低下とBCL2 binding thanogene, BBP/53Bp2の上昇を示すApoptosisの低下。4)Immunoglobulin heavy constant gamma 3,Immunoglobilin lambda gene cluster等の上昇があり、mod, poor diffではimmune systemの低下。5)Rho等のvascular invasion, ras-linked protein T10,P21-activated protein kinase (PaK2)等の亢進等が認められた。Bisulfite-PCR/Restriction法にて、p16,p15及びIGFR3のpromoter部位のメチル化の亢進による遺伝子発現の低下を60%、10%及び33%のHCC症例の認めた。 肝細胞癌では高頻度に癌部でIGFBP-3の発現低下(82%)が認められた。IGFR3は肝癌において癌抑制遺伝子として機能しているものと考えられる。慢性肝疾患の持続する不規則な肝細胞増殖や肝組織の無制御な癌細胞増殖においてMAPKカスケードの活性がその分子機構に関与し、これに加えてゲノムのメチル化が、肝細胞癌発生と進展に深く関与することが考えられる。
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