研究概要 |
脳内の内因性Thyrotropin-releasing hormone(TRH)が肝血流に影響を及ぼすかどうかをラットを使って検討した。ウィスター系雄性ラットの延髄縫線核にカイニン酸(0.5〜20pg)microinjectionして肝血流量の変化を120分間観察した。またカイニン酸投与の5分前にTRH抗体を脳槽内に投与してカイニン酸刺激による肝血流変化に対する効果も検討した。その結果、カイニン酸の縫線核へのmicroinjectionにより、肝血流の増加が用量依存性に観察され、本作用はTRH抗体の脳槽内前投与によって消失した。さらに実験肝障害に対する拘束ストレスの影響および脳内の内因性CRFの関与ついて検討を加えた。Wistar系雄性ラットにCCI4(2.0ml/kg sc)を投与し、その後6時間にわたりラットを拘束ストレスに曝した。同時にCRFアンタゴニストであるastressin(0.1-1μg)および生理食塩水をそれぞれCCI4投与直前と6時間後に脳槽内投与して内因性CRFの関与を検討した。その結果、拘束ストレスによってCCI4による血清ALT, AST, ALP,T-Bil値の上昇および肝組織像がさらに増悪した。CFRアンタゴニストであるastressinの投与により拘束ストレスによって増悪した血清ALT, AST, ALP, T-Bil値の上昇が用量依存性に抑制され、更にストレスによって増悪した壊死や脂肪変性といった組織変化も軽減した。本肝障害に対するストレスによる増悪効果は6-ヒドロキシドーパミンおよび肝交感神経切除(3日前)により消失したが、アトロピン前処置および迷走神経肝臓枝切断術は影響しなかった。以上の結果より、脳内の内因性神経ペプチドが肝の生理機能および病態に関与していることが示唆された。
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