研究課題/領域番号 |
12670516
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
北村 庸雄 順天堂大学, 医学部, 講師 (20231285)
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研究分担者 |
藤田 敬子 東京都老人総合研究所, 分子病理, 助手 (00100131)
広瀬 美代子 順天堂大学, 医学部, 助手 (70266039)
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 助手 (20317382)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2001年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2000年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 老化 / 肝再生 / SMP30 / 肝細胞 / アポトーシス |
研究概要 |
SMP30は加齢とともにその発現が減少するCa2+結合蛋白で、老化機構に関わる蛋白と考えられている。またラットでは肝と腎に高発現していることから、加齢により生じ得る肝病態の変化(急性肝障害の重症化、肝再生能の低下)に関与している可能性が推測される。我々はSMP30の発現と肝細胞死制御の関連を明らかにするため、その機構を肝細胞の増殖・分化、Ca2+ signalingの点から検討した。(1)Hep G2細胞にpcDN A3/SMP30を導入することでtransfectants(tf)を作製し、種々の細胞死シグナル(Ca2+ overload、tumor necrosis factor-a plus actin omycin D : TNF-a/Act D、serum deprivation)に対するアポトーシス誘導をmock transfectants(mtf)との対比において比較検討した。(2)SMP30 knockout(KO)およびwild type(WT)マウスから初代培養肝細胞を分離培養し、細胞死シグナルに対するアポトーシス誘導能、epidermal growth factor(EGF)に対するDNA合成能、および免疫蛍光染色によるconnexin32発現を指標とした細胞分化能の比較検討を行なった。(3)またCa2+動態の検討を[Ca2+]iおよびCa2+ effluxの測定により行なった。(1)Ca2+ ionophoreによるアポトーシス誘導はtfにおいて有意に抑制された。またtfではATP刺激による[Ca2+]iの上昇が抑制され、同時にCa2+ effluxの亢進が認められた。一方、TNF-a/Act Dによるアポトーシス誘導もtfで有意に抑制され、この抑制はcalmodulin(CaM)の阻害剤であるtriflu operazineにより濃度依存性に解除された。さらに血清除去によるアポトーシス誘導もtfで有意に抑制された。(2)マウスより分離した肝細胞においてTNF-a/Act Dによるアポトーシス誘導はKOで有意に増強された。一方、EGF刺激によるDNA合成能の亢進はKOで有意な抑制がみられた。さらに細胞分化能の検討では、培養にともなう肝細胞脱分化の加速がKOにおいて認められた。(3)phenylephrineによる[Ca2+]i responseはKOとWTで異なり、前者では[Ca2+]i oscillations([Ca2+]iの時間的・周期的変動)の発現が認められた。種々の細胞死シグナルに対しSMP30は肝細胞のアポトーシスを抑制することが明らかとなった。この機構は単一ではなく、(1)細胞膜Ca2+ pump活性化による[Ca2+]i homeostasisの制御、(2)CaM/CaM kinase cascadeによる細胞死回避シグナルの増強、(3)細胞増殖・分化機構の調節、(4)Ca2+結合蛋白としての[Ca2+]i signalingに及ぼす影響などを介し機能しているものと考えられた。SMP30は肝細胞における新しいアポトーシス制御因子であり、その発現は加齢にともない減少することから、高齢者における肝障害の病態に関与している可能性が示唆された。
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