研究概要 |
<実験的観点>免疫組織学的検討では、PFA固定検体における陽性所見は見られなかった。また、新鮮凍結切片による検討でも、HRP標識抗体を用いた手法では反応産物の局在は明らかでなかった。 一方、同新鮮凍結切片の蛍光抗体法では、cont群において、被蓋上皮や粘液細胞の周囲に一部連続して認められたが、LC群では有意な反応をほとんど認めなかった。画像解析による検討上、contにおける陽性反応は0.043±0.055%、一方LC群は0.021±0.038%で有意差は明らかではなかった。同様にconnexin 32においてもPFA固定検体と新鮮凍結検体を用いた酵素抗体間接法では有意な陽性反応は見られなかった。一方、新鮮凍結検体を用いた蛍光抗体間接法では、cont群,LC群ともに、被蓋上皮と粘液産生上皮細胞の周囲に明らかな陽性反応が認められ、特にcont群では粘膜層内あるいは粘膜筋板直上まで線状の陽性反応が散見された。一方画像解析による検討上、contでは0.607±0.241%、LCは0.186±0.104%でLCでの低下が認められた(P<0.05)。以上より、ZO-1陽性反応は健常ラットにおいて被蓋上皮や粘液細胞の周囲に一部認められたが、上皮先端はアーチファクトが混入しやすく、評価が難しいところである。一方、connexin 32陽性反応は蛍光抗体間接法によりcont群,LC群ともに、被蓋上皮と粘液産生上皮細胞の周囲に明らかに認められた。特にcont群では粘膜層内あるいは粘膜筋板直上まで線状の陽性反応が散見され、HE染色標本との対比により分泌腺や増殖帯に一致すると考えられた。また画像解析上でも、LCでconnexin 32陽性反応の低下が認められ、酸の細胞内への侵入が助長される可能性が示された。 <臨床的観点>PHGは内視鏡的にsuperficial reddening (SR), snake skin appearance (SSA), cherry red spot (CRS), diffuse hemorrhage (DH)を呈するが、各所見と背景肝障害の進展度に関する臨床的研究をprogressした。慢性肝炎(CH)、肝硬変(LC)、と門脈閉塞時(vp)における胃内の上,中,下部の内視鏡的PHG所見を、SR, SSA, CRS, DHで評価した。H.pylori感染を知り得た症例は除外した。肝障害との関係はPT, CH-E, plt数,spleen index, k-ICGで検討した。また肝障害の進展度と各種PHG所見の関係をロジスティック回帰分析により検討した。結果、SRは下部で多く認められたが(41-69%)、肝疾患の進展度との相関は見られなかった。SSAは下部(0-16%)に比較して中部(22-25%),上部(29-39%)で認められ、CRSはCH.LC共に上部(17-55%)で、DHはvp群の上部(47%)で有意に多く認められた。肝機能との対比では、CRS群でPTが、CRS群ではCH-E, plt数が共に有意に低値を示した。DH群ではCH-E, plt数,k-ICGの低下とspleen indexの上昇が明らかであった。ステイック回帰分析では下部でのSSA,上部でのCRS, DHの出現がOdds比2.8,1.6,10.9と肝疾患の進展度を有意に反映すると考えられた。
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