研究概要 |
鳥飼病は過敏性肺炎のひとつであるが、慢性型が多く、多彩な臨床症状を呈するなど診断が困難な症例も多い。我々の教室ではこれまで臨床例でのretrospectiveな研究をおこなってきている。今回鳥飼病の病態解明の一助とすべく、マウスを用いた過敏性肺炎モデルを作製した。 C57BL/6Jマウスを用いて、鳩糞抽出物(PDE)による週3日の反復経鼻感作をおこなったところ、4週間の反復感作で肺/体重比の有意な増加と、BAL中総細胞数の増加、細胞分画では一過性に好中球増加を認めた後、最終感作終了3日目以降で好中球の減少とわずかなリンパ球増加傾向を認めた。肺病変は肺全体に気管支血管束周囲へのリンパ球集簇を認めた。また抗PDE IgG抗体の産生を認めた。8μg以上のPDE感作により上記の肺病変及び抗体産生を認め、最終感作後の経日的変化から、PDE感作終了後3日目に脱血死後、実験を施行した。 さらに17週間の長期反復経鼻感作を実施し、検討した。肺/体重比の更なる増加と肺病変では4週感作でみられた所見に加え、肺胞腔内へのマクロファージ集簇、軽度ながら胞隔炎の出現も認めた。また17週間感作群にて肺のハイドロキシプロリン量増加を認め、線維化巣の出現を示唆していた。肺全体のRNAを用いたサイトカインmRNAの発現量はreal time PCR法(ABI PRISM7700)を用いて定量した。結果として、PDE感作によりIFNγ、TNFα、IL-10の増加を認め、その程度は4週感作群、17週感作群で有意差を認めなかった。IL-2,IL-4,IL-6 mRNAの発現量はPDE感作で有意な変動を認めなかった。肺全体のRNAではPDE感作肺病変において上記pro-inflammatory cytokineとant-inflammatory cytokineの重要な関わりが示唆された。
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