研究概要 |
間質性肺疾患症例(病理学的にUIPパターンを示すもののうちで特発性間質性肺炎と膠原病合併間質性肺炎)について,臨床所見・画像・病理において対比・検討を行った.その結果,膠原病を合併する間質性肺炎では,病理学的に線維化スコアや肺胞領域の細胞密度が少なった.また,リンパ球は肺胞壁に局在していた.抗TGFβ抗体と抗CD4抗体を用いた免疫二重染色の手法により,TGFβ産生Tリンパ球の同定を外科的病理標本および気管支肺胞洗浄液細胞サイトスピン標本で試みたが,検討した範囲ではこれは発見されなかった.さらに,外科的肺生検標本で,Th2シフトに関連するその他のサイトカインについて局在を検討した.IL-4,IL-5については,炎症部位に存在するリンパ球などの炎症細胞にみられるほか,細気管支上皮細胞,血管内皮細胞,上皮化生細胞などに局在が認められた.外科的肺生検において得られた各症例群の線維芽細胞を三次元的に培養する手法を用いて,細胞の収縮能を比較し,それに関与する因子を検討した.UIP症例からの線維芽細胞は,NSIP症例からのものと比べて収縮性が強かった.この収縮性の違いにfibronectinとTGFβ1の関与が示された.また,健常肺からの線維芽細胞での実験では,グルココルチコイドが収縮性を増強し,これはF-actinの増加を一致するという結果を得た.また,プロテアーゼ・アンチプロテアーゼの不均衡により肺の炎症性・線維化性病態が発生するのではないかという観点から,肺胞上皮細胞におけるmatrix metalloproteinase-3(MMP-3),tissue inhibitor of metalloproteinase-3 (TIMP-3)のmRNA発現をTGFβやIL-1βなどの存在下で検討し,IL-1βは主にMMP-3を,TGF-βは主にTIMP3の発現を増強した.また,肺胞上皮細胞に対する喫煙抽出物質の影響を調べてみると,濃度・時間依存性にapoptosis, necrosisを引き起こした.これらは,種々のantioxidantにより阻害された.
|