研究概要 |
本研究の目的は、計算機による画像シミュレーションという全く新しい手法を用いて、呼吸器疾患の病態解明と画像診断精度の向上に寄与することである。 本年度は、孤立性肺腫瘤の画像シミュレーションの結果にもとづいて開発した画像解析手法を臨床CT画像に適用し、孤立性肺腫瘤の良悪性判別に有用であることを示した。具体的には、大阪大学医学部放射線科のご協力を得て、大阪大学附属病院放射線部に設置されているマルチスライスCTスキャナーで得られた高分解3DCTデータを用いて、腫瘤周辺に存在する肺血管の方向分布を求めた。その結果、良悪性で異なる方向分布を呈することが確かめられた。その方向分布は、画像シミュレーションに用いた数学モデルによく合致していた。 また、画像シミュレーションにより得られた仮想CTデータより仮想単純X線像を生成し、胸部単純X線像の読影限界について検討した。大阪大学医学部放射線科5名,一般内科医2名,研修医2名で読影実験を行なったところ、腫瘤のタイプにより、検出限界が異なることが明らかになった。含気型腫瘤で20mm,充実型腫瘤で5mm以下の腫瘤は、医師の診断能力や経験の有無によらず、単純像では検出しがたいことが判明した。 吸呼気CT画像解析手法を構築するために必要な手法として、線状構造の剛体マッチング手法を確立し、肋骨の運動解析を行なった。 また、3次元画像データから、肺血管や気管支などの分岐点を精確に検出する手法を開発した。さらに、4D画像データによる呼吸運動解析を行なうための理論的な基盤として、肺の4次元モデルをIowa大学生理画像研究部のHoffman教授と共同で開発し、本年度の北米放射線学会で発表した。
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