研究課題/領域番号 |
12670561
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
呼吸器内科学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
萩本 直樹 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (50315074)
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研究分担者 |
桑野 和善 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (40205266)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2001年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2000年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | アポトーシス / TGF-β / 細気管支上皮細胞 / p21 / カスパーゼ / Fas / 肺線維症 / 細気管支上皮 / caspase / 肺傷害 |
研究概要 |
【目的】我々はFas-Fas ligand pathwayがマウスのブレオマイシン肺臓炎、LPS肺傷害モデル、ヒト肺線維症の発症機序に重要であることを報告した。一方、Transforming growth factor-β(TGF-β)は、多機能性のサイトカインであり、肺損傷後の線維化期においてkeyとなる因子である。肝臓では、TGF-βは肝実質細胞の細胞死を誘導し、肝硬変の初期病因の1つとして重要であるとされるように、急性肺傷害における重要性についても報告されている。そこで今回、TGF-βの直接の肺上皮傷害性、アポトーシス誘導能、Fas経路への影響につき検討した。 【結果】in vitroの実験系において、TGF-β1は単独で用量依存的にカスパーゼ3を活性化し、細気管支上皮細胞をアポトーシスに誘導した。また、低濃度のTGF-β1はp21の発現抑制を介してカスパーゼ3を活性化し、細気管支上皮細胞をアポトーシスに誘導した。細気管支上皮細胞にp21を遺伝子導入し、p21を高発現させるとTGF-β1によるアポトーシスは抑制され、同時にカスパーゼ3の活性化も抑制された。またマウスの経気管的にアポトーシス誘導性の抗Fas抗体を注入して作製した肺傷害モデルにおいては、低用量の抗Fas抗体注入ではマウス肺にあまり変化は見られないが、TGF-β1の前処置によりカスパーゼ3活性、肺胞上皮細胞のアポトーシスを増強し、結果的に肺傷害を増悪させ、48時間以内に約半数のマウスが死亡した。また、高用量の抗Fas抗体注入では、マウスは48時間以内に9割死亡し、広範な肺胞出血、好中球主体の強い炎症細胞浸潤を認めた。 【考察】TGF-β1はin vitro、in vivoにおいてカスパーゼ3の活性化を介してFasによる肺上皮細胞のアポトーシスを増強した。Fas誘導性のマウスの肺傷害モデルにおいては、肺傷害も増強した。またその機序としてp21の発現減弱を介したカスパーゼ3の活性化が考えられた。p21はカスパーゼ3の前駆体と直接結合し、Fasの経路に抑制的に働いていることが報告されているが、TGF-β1はp21の発現を抑制し、p21-procaspase3 complexを抑制することで、間接的にカスパーゼ3の活性化を誘導すると考えられた。これらの結果より、TGF-β1が、肺線維症の発症過程における線維化期での古典的な役割以外に急性期の病態においてもアポトーシス増強因子として重要な役割を持っていることを意味する。また、今回の結果よりさまざまな因子によって調節される細胞内のアポトーシスのシグナル経路を抑制することで、肺傷害が軽減し、治療の展望に結びつく可能性が考えられる。
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