研究概要 |
疫学調査では,気道ウィルス感染が気管支喘息の発症に関与していることが明らかにされている。感染型喘息の発症に気道感染が重要な関与をしているが、その機序はいまだ解明されていない。私共はインフルエンザAウィルス感染時に低濃度抗原を吸入させると,抗原特異的IgE抗体産生,気道過敏亢進が生じることなどを明らかにしてきた(JACI102;732,1998)。本研究では,ウィルス感染時の抗原感作元進においてどのような抗原提示細胞が活性化され,どのようなメカニズムでTh2細胞が活性化されるかを明らかにする。 本研究では,気管支喘息患者の抗原感作・曝露の経路を考慮した経気道的なアレルゲン感作の方法を用いた。マウスに馴化したインフルエンザAウィルスをマウスに点鼻感染させた。感染急性期に抗原として卵白アルブミンを吸入させると,抗原特異的IgEが産生され,気道過敏性の出現,Th2サイトカインの放出が見られた。この際,気道内に樹状細胞が出現し抗原を貧食し,所属リンパ節に運ばれる。感染回復期に抗原を吸入させても,樹状細胞はほとんど出現せず,抗体産生も認めなかった。インフルエンザAウィルス感染時のサイトカイン放出を検討すると,IFN-γは3日目より上昇し,7日目にピークを示した。TNF-α,MIP-2,KCはともに3日目にビークを示し,5日目には低下を示した。IL-4およびIL-5は変化を示さなかった。IL-12も変化を示さなかった。 以上,インフルエンザAウィルス感染の急性期には樹状細胞が気道に集積し,抗原を貧食し,T細胞活性化をおこしtype2の免疫反応を起こす。しかし,ウィルス感染時にはTh2サイトカイン以外の因子によって樹状細胞の抗原貧食およびT細胞の活性化が招来されると考えれる。
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