研究概要 |
目的:エリスロマイシン(EM)に代表される14員環マクロライドが慢性気道炎症に対し、有効であることが一般に認められている。その機序として炎症細胞の抑制作用が注目されている。そこで我々は間質性肺炎モデルであるブレオマイシン(BLM)肺線維症に対する14員環マクロライド(14-MRMLs)の抑制効果を検討し、さらにその抗炎症、抗線維化作用機序解明のため、BLM肺傷害における好中球の役割、好中球と血管内皮間接着分子であるE-セレクチン、P-セレクチン、VCAM-1の発現及び14員環マクロライドの抑制作用について経時的に検討した。 対象と方法:7週齢、ICR雄マウスを用い、生食投与群、BLM単独投与群、BLMと14員環マクロライドであるEM、ロキシスロマイシン(RXM)、クラリスロマイシン(CAM)併用投与群を設定し、BLM肺線維化の評価モデルを用いて、BLM投与後28日の肺組織のハイトロキシプロリン(HOP)測定と病理組織学的比較検討を行った。BLM投与後、0時間から168時間まで経時的に気管支肺胞洗浄を行い、総細胞数と細胞分画を算定した。また肺組織からRNAを単離し、RT-PCR法によりE-セレクチン、P-セレクチン、VCAM-1、ICAM-1、TNFαmRNAの発現を経時的に検討した。 結果と考察:1)BLM肺線維症に対し、14員環マクロライドが抑制効果を有することが確認された。2)好中球はBLM投与後、1日目と9日目以降をピークに気腔内に浸潤することが確認された。3)14員環マクロライド薬はVCAM-1の発現をmRNAレベルで抑制することにより好中球の気腔内への浸潤を抑制し急性炎症期を抑制する結果、線維化を軽減させる可能性が示唆された。 本研究の結果から,臨床で間質性肺炎の急性増悪あるいは急性肺傷害を起こし得る病態にある患者に対し,14-MRMLsの予防効果が期待できると考えられる。マクロライド薬の従来の抗菌作用によらない,新たな抗炎症作用に関する本検討において,創薬の視点から,抗炎症作用を主眼としたマクロライド化合物の開発に寄与することが期待され,また特異性肺線維症に対して新たな治療法の創出において実験的根拠を提供することができた有意義な研究である。
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