研究概要 |
APPsw miceでは7倍のAPPの過剰発現が恒常的に認められた.neuritic plaqueは8月齢から,diffuse plaqueは12月齢から出現し,異なる老人斑の起源が想定された.8月齢で脳AβはSDS可溶性から不溶性となり,このAβの不溶化獲得が脳アミロイド形成の誘因と考えられた.脳Aβの蓄積に反比例して髄液・血漿Aβは減少し,この変化が髄液・血漿Aβの低下がADの生化学的マーカーの根拠と考えられた.APPsw miceではlipid raftsが脳Aβアミロイドの超早期沈着部位であった.神経細胞とシナプスの消失、リン酸化Tauの蓄積、脳内アセチルコリンの低下および記憶学習障害が見られた.以上の検討よりAPPsw miceでAβの過剰産生が脳アミロイドの原因と考えられた.APPsw miceはAD病態の解明および治療法の開発に有用な動物モデルであると考えられた. APPsw x Presenilin-1 L286V double TGでは著明なAβアミロイドーシスの促進が認められ,変異Presenilin-1の病的役割はAβ Ppathologyの促進であった.脳にTauopathyを再現するTau R406W miceではアミロイドは認められなかった.以上から、脳アミロイドはADの他の病理変化を引き起こす一番重要な因子であり,ADの根本的な治療のターゲットであると考えられた. 孤発性アルツハイマー病では血液中でAβアミロイド沈着を予防する防御的代謝系の活性化機能不全が認められ、Aβのアミロイド形成に直接貢献しうる病的分子種、リポ蛋白非結合型Aβが病初期より増加している。本研、Aβダイマー形成能を持つきわめてアミロイド原性に富むリポ蛋白非結合型Aβが同定された.リポ蛋白非結合型Aβはアルツハイマー病脳で増加しており、脳内アミロイドーシス惹起分子と考えられた。 脳アミロイドーシスを再現するAPPswマウスを用いて,1)Aβ42ワクチン療法の効果,2)ワクチン療法における副作用の検討,3)メラトニンによるAβ凝集抑制による脳アミロイド抑制作用を検討した.Aβ42ワクチン療法では脳不溶性Aβ42の43%を抑制していた.投与されたマウスに死亡例がみられ副作用の詳細な検討が必要と思われた.メラトニンは8ヶ月齢から11ヶ月齢まで動物モデルにおける脳アミロイド沈着を抑制した.メラトニンは現実に使用されている薬剤であり,現実の臨床応用に向けたさらなる詳細な検討が必要と考えられた.
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