研究概要 |
脳卒中様発作を主徴とするミトコンドリア脳筋症のひとつであるMELAS症候群はミトコンドリア遺伝子[mtDNA]の塩基番号3243位のアデニンからグアニンへの点突然変異を病因とする.そのミトコンドリア血管症の病態に関しては,血管性浮腫をきたすことが我々の臨床的検討から明らかとなった(Yoneda et al. Neurology,53:2181-2184,1999).培養細胞において,病態機序を検討するため,患者由来のmtDNAを導入した脳血管由来培養細胞の構築を目指した.ヒト脳細動脈内皮細胞の初代培養株(BME;大日本製薬)からmtDNA欠損株を構築するの条件設定を行い,培地に添加する至適なエチジウムブロミド(EtBr)濃度の条件を見い出した.この条件下で,約2週間でmtDNAは,ほぼ検出感度以下まで減少することが明らかとなった.次に,MELAS患者由来の血小板mtDNAの血管内皮細胞への導入のため,福井医科大学附属病院へ通院するMELAS患者から,パーコール法で血小板(mtDNAのみを有する)を単離し,ヒト脳細動脈内皮細胞の初代培養株BMEへ細胞融合法によって導入を試みた.しかし,変異型mtDNAを導入した培養細胞(サイブリッド)は,培地条件を変えても,エネルギー産生が低下しているため継代維持が困難であった.今後,培養細胞の種類や培地条件を検討中する必要がある.
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