研究概要 |
パーキンソン病患者および非神経疾患の剖検脳のホルマリン固定標本および凍結保存脳を対象に,抗ヒトcyclophilin A抗体を用いた免疫組織化学,免疫ブロッテイング法による検討を行った.両法により対照,パーキンソン病とも黒質にcyclophilin Aの発現がみられ,その発現は黒質ニューロンの細胞質に分布することを明らかにした.この結果,immunophilinリガンドを投与した場合,ヒトにおいても黒質細胞に結合部位があり,immunophilinリガンドの治療的応用の可能性が確認された. C57BL6マウスのMPTP(1-methyl-4-hydroxyl-2,3,4,6-tetrahydropyridine)投与パーキンソニズムモデルを対象に,MPTP(30mg/kgを一日2回,2日間)投与1週間前より,immunophilinリガンドの一種GPI-104610mg/kgを連日皮下投与,MPTP投与終了後7日間経過ののち,マウス線条体のドパミンを測定しMPTP毒性に対するGPI-1046のドパミンニューロン保護効果を検討した.また同じ実験系のMPTP投与後第5日目にマウス脳の灌流固定を行い,中脳の連続30μm間隔6μm厚め10切片について,抗チロシン水酸化酵素(TH)抗体を用いた免疫染色を行いドパミン産生細胞の細胞数定量を行った.その結果,TH陽性細胞数(平均±SD)は対照66.6±30.6,MPTP投与40.7±14.6,MPTP+GPI4046投与63.5±25.2で,GPI-1046によるMPTP毒素からの細胞保護が示唆される結果を得た.サルMPTPモデルにおけるGPI-1046投与の効果については現在研究を継続進行中である.
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