研究分担者 |
川野 仁 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (20161341)
小柳 清光 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (00134958)
大橋 十也 東京慈恵会医科大学, DNA医学研究所, 助教授 (60160595)
三五 一憲 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 主任研究員 (50291943)
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研究概要 |
運動神経損傷や運動ニューロン疾患に対して,各種神経栄養因子の治療効果が期待されている.我々は,これまで,成体ラット顔面神経核および脊髄前角運動ニューロン死に対するグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)組換えアデノウイルス投与の有効性を報告した.本研究では,脳由来神経栄養因子(BDNF),毛様体神経栄養因子(CNTF),カルジオトロフィン-1(CT1),トランスフォーミング増殖因子β2(TGFβ2),インスリン様増殖因子1(IGF1)組換えアデノウイルスを作製し,顔面神経核運動ニューロン死に対する保護効果について検討した.組換えウイルスのCOS1細胞感染により,各栄養因子が培養上清に大量放出され,同培養上清の神経栄養活性はラット胎仔運動ニューロン培養系で確認された.これら組換えウイルスを,12週齢Fischer344雄ラットの右顔面神経を引き抜き除去したのち傷害側の茎乳突孔に注入した.その結果,傷害側の顔面神経核運動ニューロンが各々BDNF, CNTF, CT-1, TGFβ2, IGF1免疫染色で強陽性となり,これら外来遺伝子が導入できたことが確認された.引き抜き損傷2〜4週間後,BDNF, TGFβ2組換えウイルス投与ではGDNF組換えウイルス投与と同様に障害側顔面神経核運動ニューロンの脱落が顕著に抑制され,コリンアセチル転移酵素の免疫反応性が改善,一酸化窒素合成酵素活性の亢進が阻止され,GDNF, BDNF組換えウイルス併用投与では更なる効果の改善をみた.一方,CNTF, CT1, IGF1組換えウイルス投与では効果を認めず,引き抜き損傷による成体運動ニューロン死に対する神経栄養因子の作用機序についてより詳細な検討が必要と考えられた.以上のことから,既報告のGDNF遺伝子導入に加えて,運動神経損傷や運動ニューロン疾患に対するBDNF, TGFβ2遺伝子導入の有効性が示唆された.
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