研究課題/領域番号 |
12670654
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
井上 博 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (60151619)
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研究分担者 |
供田 文宏 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (90251884)
能澤 孝 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (00180737)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2001年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2000年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 心筋虚血 / 心不全 / 神経成長因子 / 交感神経 / カテコラミン / β受容体 |
研究概要 |
心不全における過剰な交感神経賦活は心不全を悪化させると考えられている一方、最近の大規模臨床試験において中枢性交感神経抑制薬moxonidmeが心不全の予後を悪化させたことが報告された。このように心不全と交感神経の関連については未だ不明な点が多い。交感神経機能を調節する主要な因子の1つに神経成長因子(nerve growth factor, NGF)がある。NGFを過剰に発現させると心筋カテコラミン含量は増加し、心筋細胞は肥大する。また、一過性の心筋虚血によってNGFが放出される。それ故、NGFは虚血心や不全心における心臓交感神経機能およびβ受容体シグナル伝達に影響をおよぼすと考えられる。本研究では、(1)心筋梗塞後心不全ラットにおいて、グアネチジンによる末梢交感神経抑制が心機能および予後に及ぼす影響、(2)心臓の虚血再灌流による心臓交感神経機能に及ぼすNGFおよびanti-NGFの効果をノルエピネフリンのアナログであるmeta-iodobenzylguanidine(MIBG)を用いて検討した。 (1)心筋梗塞作成直前から、低および高用量のグアネチジンを4週間投与した。4週間後の死亡率はグアネチジン非投与群で52%、低および高濃度のグアネチジン投与群でそれぞれ6%、96%であった。低濃度投与群では非投与群に比べ、4週間後の左室拡大は抑制され、左室短縮率も有意に改善した。Sham手術群(心筋梗塞なし)に高用量のグアネチジンを投与しても死亡例はなく、左室収縮能・左室径には変化がなかった。低用量投与群では非投与群に比べ血漿ノルエピネフリン濃度が有意に低下したが、心筋ノルエピネフリン含量の有意な変北はなかった。高濃度投与群では心筋ノルエピネフリン含量枯渇した。(2)15分虚血再灌流心において、虚血部および非虚血部ともNGFはMIBG集積を低下し、anti-NGFは集積を増大した。虚血部と非虚血部の集積比はNGF、anti-NGFとも非投与群と差はなかった。 本研究から、心不全における過度の交感神経抑制は予後を悪化し、"適度"の交感神経抑制は顕著に心機能、予後とも改善した。Anti-NGFは虚血による交感神経機能障害を抑制したことから、虚血や心不全時に細胞間隙の大量のノルエピネフリン濃度をその再取り込み機能により減少することが期待され、anti-NGFは交感神経機能のみならず心機能にもよい影響を与える可能性が考えられる。また、交感神経遮断薬により交感神経活動を"適度"に抑制することは必ずしも容易ではないと思われるが、anti-NGFにより交感神経活動を調整することが心不全治療に有用である可能性が考えられる。
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