研究概要 |
洞結節細胞の活動電位形成には様々なイオンチャネルが関与する。現在までの我々の研究ではペースメーカー電位の形成に2種類のCa電流,過分極誘発電流および内向き背景電流が重要な役割を果たしていることが確認された。一方,洞結節細胞の再分極相を形成する電流系に関する報告は少なく,そのイオン機序も十分に検討されていない。今回の研究では,特に洞結節細胞の再分極相を形成するイオンチャネルとして重要と考えられる一過性外向きK電流(Ito)に関して,その構造と機能を検討した。その結果,洞結節細胞には4-aminopyridine(4-AP)に感受性のあるItoが存在し,そのIC50値は0.28mMと確認された。洞結節細胞のItoは膜電位が+10mVで電流密度が2.5±0.3pA/pFであり,活動電位のピークでItoは約100pAの外向き電流を生ずると考えられた。洞結節細胞Itoの電流密度は心房筋の約半分であり,不活性化からの回復過程の時定数も心房筋と比較して非常に速い値を示した。洞結節および心房筋から抽出したRNAを用いてRT-PCRを行った結果,心房筋の構成遺伝子はKv1.4が主体であることに対して,洞結節はKv4.2および4.3が主体であると考えられた。以上の結果,洞結節細胞のItoは活動電位の再分極相において重要な役割を果たしている可能性が示唆されると共に,その構成遺伝子は心房筋と異なりKv4.2および4.3が主体と推測された。
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