研究概要 |
高頻度ペーシングによる心不全モデルを用いて,心機能障害から心不全に至る過程での心筋β受容体細胞内伝達系の機能を,まず無麻酔覚醒状態にて生理学的手法を用いて評価し,さらにこの生理学的変化が実際どの生化学的変化と最も相関するかを検討した.雑種犬9頭にて右室高頻度ペーシング(240bpm)を行わない犬(2頭),およびペーシング1日目(3頭),1週目(2頭),6-7週目(2頭)の犬のイソプロテレノールに対する心筋反応性(左室dP/dt)を測定した.結果,ペーシング1日目よりイソプロテレノールに対する左室dP/dtの反応性(+4671±242→+1872±149→+1719±137→+1316±89mmHg/sec),高親和性β受容体数(45±4→26±6→18±3→9±3fmol/mg)およびアデニル酸シクラーゼ活性(104±4→74±10→69±5→49±3pmolcAMP/mg/min)は進行性に低下した.リアノジン受容体はペーシング1日目より減少したが進行性ではなかった(1013±25→808±42→826±53→782±61fmol/mg).総β受容体数,Gs蛋白は変化しなかった.β受容体キナーゼおよびβアレスチンはテクニカルな問題で測定できなかった.心機能障害時,イソプロテレノールに対する心筋反応性の低下は高親和性β受容体数と最もよく相関していた(r=0.72,p<0.01).以上より,心筋反応性の低下は心筋β受容体-Gs蛋白-アデニル酸シクラーゼ細胞内情報伝達経路のうち高親和性β受容体数の低下に起因するものと考えられた.
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