研究概要 |
本研究の目的は、ミトコンドリア病の治療のため、本疾患の特徴である変異ミトコンドリアDNA(mtDNA)と正常mtDNAのヘテロプラスミーの状態を、機能的に正常域まで正常mtDNAの割合を上昇させることが可能な要因を見いだすことである。分裂速度の速い細胞として,A3243G変異をもつMELASを発症した1患者から採取した培養線維芽細胞をcytochalasin B処理後遠心し脱核したサイトプラストと,Etidium bromide処理でmtDNAを完全に除去したHeLa細胞(ρ0細胞)をポリエチレングリコールで細胞融合させて樹立した2個の独立した細胞(サイブリッド)クローンを用い、以下の実験をした。2個のサイブリッドクローンA, Bにおける変異型mtDNAの割合は、それそれ11%および42%であった。 1)クローンA, Bを用い、低酸素(培養液中の酸素濃度70mmHg),定常酸素(150mmHg),高酸素(500mmHg)にて72時間培養を続けた。その後マニュプレターによって細胞を一個毎採取しそのsingle cell PCRをおこない,変異の有無が検討できるApa I RFLPを用いてmtDNAの変異率を求めた。2)次に、クローンA, Bを用い、グルコース濃度を0%から0.5%と変化させた各培地で培養を72時間続け、mtDNAの変異率を求めた。3)クローンBを用いインスリン、プレドニゾロンを培地に一定濃度で加え、そのmtDNAの変異率に与える影響を検討した。 その結果、1)クローンBでは高酸素負荷時に細胞障害が強く現れ、特に変異率の高い細胞が選択的に細胞死したため、結果として細胞群自体の平均的な変異率は有意に低下した。 2)クローンBでは低グルコース負荷時に変異率のより高い細胞が細胞死をおこし結果的に細胞群自体の平均的な変異率は有意に低下した。3)インスリン、プレドニン負荷培養実験では、有意なmitDNAの変異率の変化は認められなかった。
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