研究概要 |
【目的】IGF-I受容体のKOマウスでは、出生体重が標準体重の45%と報告されている.このことは,原因不明の胎内発育不全に伴う低身長児,以下IUGR性低身長の中に,IGF-I受容体の異常症が含まれている可能性が示唆され,私達は原因不明のIUGR性低身長児を対象にIGF-I受容体遺伝子の解析を行った.【対象と方法】出生体重が-1.5SD以下で,3歳以降も-2SD以下の低身長を呈した21例を対象とした.末梢血単核球DNAを抽出後、IGF 1R遺伝子のExon1〜21およびその近傍のintronについて設定したプライマーPCRで増幅後、direct sequence法で遺伝子を解析した.【結果】EX1の5'UTR部分に4bpのdeletion(977-980delCTTT)を1例に認めた.EX3では1例にアミノ酸変異を伴わないsilent mutation(204CCC/CCT)を認めた。EX11(736ACC/ACT),16(1012GAG/GAA),21(1316TAC/TAT)では既に報告されているsilent mutationをそれぞれ,9例、13例、2例に認めた.いずれもヘテロのmutationであった。一方Intronでは,intron13(-53T/C),15(+72A/G)にこれまでに報告されていない1塩基置換を12例、9例認めた。また,Intron20(-34G/A)に既に報告されている変異を11例に認めた.Intron13に認められた変異はキャッチアップ群(9例)で、IUGR性低身長群(21例)、コントロール群(18例)と比べ,変異が少ない傾向が認められた.一方intron15,20で認められた変異は、各群間に明らかな差は無かった。【考察】EX1のUTR部分の4bp delationが1例に認められた.今後は家族の解析と機能解析を進める予定である。EX3,11,16,21に一塩基置換を認めた。特に,EX3の1塩基置換はこれまでに報告のない新しい変異である。Intron13,15,20にも1塩基置換を認めた.このうち、intron13,15はこれまでに報告のされていないものである.これらのintronの1塩基置換では、intron13で、キャッチアップ群が、コントロール群、IUGR群に比べ少ない傾向を示した。これについては、今後も例数を増やして検討していく予定である。
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