研究概要 |
【目的】 Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)の筋壊死の原因として凝固・線溶系に注目し、筋ジストロフィーモデルマウス、および低年齢のDMD男児にて抗凝固療法を行ない、その有効性を評価することを目的とした。 【方法と結果】 1.筋ジストロフィーモデルマウス実験:mdx幼若マウス(各3匹)に魚油除去飼料を2週間胃内投与(A群)またはEPA製剤(商品名:エパデール)を2週間胃内投与(B群)し、投与前後のCK値の変動と筋壊死・再生像の変化を検討した。 正常コントロールと比較してA群・B群ともCK値や筋壊死・再生像に有意な効果は確認できなかった。 2.DMD男児における臨床的研究:本研究へのインフォームドコンセントを両親から得られた男児(5-12歳)を対象とした。(症例数7例で開始し2例は途中脱落した。) (1)抗凝固療法開始前の臨床的評価;外来にて月1回筋原性酵素(CK, Aldolase, myoglobin)、凝固・線溶系(APTT, AT III, TAT, D-ダイマーなど)を6ヶ月間測定したが凝固・線溶系に明らかな異常所見はなかった。 (2)EPA製剤(エパデール300mg/日)を6ヶ月間、計5例で内服投与して頂き、月1回筋原性酵素、凝固・線溶系6ヶ月間測定した。抗凝固療法開始前と比較して明らかな有用性は確認できなかった。 (3)組織オキシメーターを用いた骨格筋血流量の測定;組織SO_2Hb量モニター(PSA-3N)およびPowerLabデータ収録解析システムソフトを用いた。前腕筋筋腹中央部において安静時と持続収縮運動時の組織血液酸素飽和度StO_2と組織ヘモグロビン量Total Hbから筋血流量を測定した。 EPA製剤投与前後において筋血流量は5例中2例に改善がみられたが3例は逆に低下しており、EPA製剤投与による有意な改善はみられなかった。 【結論】 筋ジストロフィーモデルマウス、および低年齢のDMD男児にてEPA製剤を中心とした抗凝固療法を試みたが、いずれもその有効性を確認できなかった。
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