研究概要 |
小児の髄膜炎におけるサイトカインストームについて検討した.IL-4は全例の髄液中に認められず,IL-13は1例で認められたが,血清より低値であった.TGF-βは髄膜炎の急性期と回復期,対照群の間に有意差は見られなかった.小児髄膜炎における髄液中免疫抑制性サイトカインの中では,IL-10は髄液中で炎症性サイトカインより遅れて産生されて炎症に抑制的に働いていると推定された.可溶性E-セレクチンは髄膜炎患児の多くで髄液中に認められ,対照群より高値であった.その値は症状が消失すると低下した.IL-121とIL-18も一部の症例では髄液中で高値であった.また,髄液にIL-6の可溶性受容体であるsoluble IL-6R, soluble gp130が認められた.IL-16は髄膜炎の急性期に髄液中において著しく増加しており,血清中より有意に高値であった.それ以外のものは髄液中濃度が血清中より低値であり,血清から移行が推定された.さらに,髄膜炎症例の髄液中の可溶性CD154を検討したが,全症例で感度以下であった.血清では認められたので,髄液中では血清より低値と考えられた.また,無菌性髄膜炎の活性化T細胞上に発現するCD154は対照群に比べて低下している可能性が示唆された. デキサメサゾンを化膿性髄膜炎モデルマウスにおいて抗菌薬投与前に投与すると,炎症性および炎症抑制性サイトカインの増加が抑制された.サイトカインストームを鎮めるのには有効と考えられた.しかし,炎症性サィトカインだけを抑制することはできなかった.小児髄膜炎の炎症反応の病態には多数のサイトカインが複雑に絡み合い,いわゆるサイトカインネットワークを形成していることが明らかになった.今後は,小児髄膜炎の予後改善のために,炎症反応の適度な制御が治療研究の課題となるであろう.
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