研究概要 |
1.ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子Has1,2を導入したヒト悪性黒色腫細胞を免疫不全マウスに移植して、そのin vivoの形質を検討し、以下の結果を得た。 (1)ヒト悪性黒色腫細胞株WN793にHas1,2を導入し、細胞の試験管内での運動性が増強することを報告した(J Inv.Dermatol.,1999)。本研究では、異なるベクターによる独立の遺伝子導入実験を繰り返し、独立のHas1,2遺伝子導入細胞系で細胞の運動性が増強することを認めた。 (2)Has1,2遺伝子導入新規細胞株をBalb/cヌードマウスに移植した。その結果、Has1,2遺伝子導入細胞においては、移植後16-18週で腹水貯留をもたらし、腹腔内リンパ節転移が生じることが分かった。対照としてのmock細胞においては、一年を経ても腫瘍形成がみられなかった。腫瘍形成能に関して、皮下移植でも同様の傾向を認めた。 2.ヒト悪性黒色腫の臨床資料でのHas1,2の免疫染色を施行したが、現在の所、特異的染色結果が得られていない。抗体、染色法いずれにおいても改良が今後の課題である。 3.1の検討結果から、ヒアルロン酸産生の悪性化におけるin vivoでの役割は細胞の生存を維持するためにも係わると考えられた。アポトーシスに係わる遺伝子ASC(1999に我々が発見、JBC)について、悪性黒色腫で検討したところ、良性の色素組織では強発現であり、悪性黒色腫では発現低下する例が多数見出された。ヒアルロン酸がASC発現を低下させるか否かは、今後の課題として残された. また、ヒアルロン酸の受容体であるCD44およびその結合分子であるモエシンについて調べたところ、より悪性の腫瘍では、モエシンの分布が細胞質に移行していることが認められた。このことは、癌細胞などでは、CD44が切断され、核へ移行するという最近見出された現象とあわせて、興味深いものである。ASC,モエシンともに、それらの悪性化に伴う発現変化は診断面での有用性を示唆しており、今後はそれらの発現変化とヒアルロン酸との関連性が課題として残された。
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