研究概要 |
アトピー性皮膚炎の病態を明らかにする目的で,本症患者の皮膚病変部角層から生理活性物質を抽出し,ELISA法で種々のケミカルメデイエーターおよび炎症性サイトカインの含有量を測定した。角層中の含有量の高いサイトカインについては,その過剰産生の機序を解析する目的で,サイトカインのプロモーター領域の遺伝子変異を検索した。 1 アトピー性皮膚炎患者病変部角層中のヒスタミン含有量 病変部から得られた落屑中のヒスタミン含有量は角層1mgあたり1.16±0.85ng,踵角層中のヒスタミン含有量は角層1mgあたり0.16±0.05ngであり,病変部で有意に高値であった。 2 アトピー性皮膚炎患者病変部角層中のサイトカイン含有量 (1)Interleukin-6(IL-6)ファミリー:病変部角層中のIL-6,IL-11,Leukemia Inhibitory Factor, Oncostatin Mの含有量は,それぞれ角層1mgあたり8.1±2.5pg,0.36±0.71pg,0.02±0.04pg,16.6±4.8pgであった。踵角層中のこれらのサイトカインはいずれも検出限界以下であった。 (2)ケモカインファミリー:代表的なケモカインであるeotaxin, RANTESの病変部角層中の含有量は,それぞれ角層1mgあたり0.30±0.32pg,12.8±17.8pgであった。踵角層中のこれらのサイトカインはいずれも検出限界以下であった。 3 サイトカイン遺伝子プロモーターの解析 RANTES遺伝子プロモーターの解析:RANTES遺伝子のプロモーター領域にみられる-401A/G単一塩基多型の頻度を検討したところ,アトピー性皮膚炎患者群では,AA10名,AG33名,GG22名であり,健常人のAA9名,AG37名,GG47名と比較してA多型の頻度が有意に高かった。また,アトピー性皮膚炎患者では,AA型,AG型,GG型の角層中平均RANTES濃度は,それぞれ30.0pg,12.8pg,6.12pgであった。 4 IL-6ファミリーサイトカインのマスト細胞増殖活性 IL-6ファミリーサイトカインは培養マスト細胞の増殖活性を示し,この作用は共存する線維芽細胞の活性化を介した間接的な作用であった。 以上の結果から,アトピー性皮膚炎患者の病変部ではIL-6,Oncostatin M, RANTESの産生が亢進しており,このサイトカインの産生亢進の一部は遺伝子多型に基づく可能性があると考えられた。
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