研究概要 |
強皮症は[I]結合組織病(多臓器の線維化)、[II]免疫異常(自己抗体産生)、[III]血管障害、(レイノー症状など)の側面を同時に有している。これら[I]-[III]を包括的に説明できるものとして活性酸素が挙げられ、中でも種々のサイトカインと関連して強い組織障害を生じ得る一酸化窒素(以下NO)がレイノー症状や肺障害で重要な働きを有すること、ブレオマイシンなど肺線維症発症因子によりNO産生が誘起されることが近年明らかにされつつある。我々は強皮症患者サンプル及び強皮症モデルマウス、サンプルにおいて誘導性と血管内皮性のNO合成酵素(NO synthetase iNOS and eNOS)の発現を正常組織と比較検討し、NO産生を器官培養・細胞培養で検討することにより,皮膚線維化発症におけるNOの役割を検討する。 研究初年度の平成12年度の目標としては強皮症患者サンプルにおける検討を行った。すなわち、強皮症患者の浮腫期3例、硬化期5例より直径5mmのパンチパイオプシー標本(皮下組織まで)を得、既に教室で作成していたiNOS、eNOSに対するモノクローナル抗体を用い、免疫組織学的にその発現状態を正常組織(5例)と比較検討した。その結果硬化期では正常組織との差を認めなかったが、浮腫期においては,一部iNOS発現の増強を認めた。eNOSの変化は不定であった。現在は,各線維における器官培養系での検討準備に入っている。さらに、各組織由来細胞の培養にも入りつつある。
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