研究概要 |
Gd-DTPA, Gd-HP-DO3A, GdDTPA-BMAはMRI造影剤として用いられ腫瘍や、炎症などの検出率を高めることに用いられる。また、ランタノイド族Gd^<3+>は7個の不体電子対を持つ常磁性体としての磁気モーメントを有する。Gd^<3+>イオンのキレートは安定化した錯体を生成する。これらの錯体のフリーラジカル消去能についてElectron Paramagnetic Resonance Spectroscopy(EPR)を用いて検討した。測定方法は高速液体クロマトグラフィーポンプを用いたフローインジェクション法にて行った。Gd-DTPA, Gd-HP-DO3A, GdDTPA-BMAは希釈して0-200μMの濃度で実験を行った。これらすべてのGd^<3+>錯体において容量依存性のヒドロキシラジカル消去能を認めた。これら各々の消去能はほぼ同程度で、イオン性(Gd-DTPA)と非イオン性(Gd-HP-DO3A, GdDTPA-BMA)の間に有意差は認めなかった。これらのMRI造影剤のヒドロキシラジカル消去能は既知のラジカル消去剤であるマンニトールのほぼ10倍で強力なラジカル消去剤であるアスコルビン酸と同程度であった。また、造影剤の添加物であるDTPA,カルジアミドナトリウムの消去能はマンニトールとほぼ同程度、すなわちGd^<3+>錯体の1/10程度であった。今回の研究においてGd-DTPA, GdHP-DO3A, Gd-DTPA-BMAは強いラジカル消去能を有することがわかった。このことは、Gd^<3+>錯体の製剤としての安定性を意味し、添加物を付加することにより安全性を高めていることが今回の一連の実験で示された。我々はこの一連の反応系はヒドロキシラジカルとGd^<3+>と結合した水分子との相互作用によるものと推測した。
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