目的:安価で簡易な遠隔画像診断の方法を検討すること 方法:佐賀医科大学放射線科医学教室内の市販パソコンと協力施設のパソコンを公衆回線であるISDNにて結び、以下の実験を行った。 初年度はISDNを通してファイルのやり取りが可能かどうかと、軽度の圧縮にて画像診断が可能かどうかの実証実験を行った。協力施設で撮影された頭部MRI画像30例の画像データをもとサイズの0.75倍の圧縮をかけたのち協力施設側で保存。佐賀医科大学側よりダイアルアップでISDNを介して協力施設パソコンと接続、画像の取得を行った。 次年度は画像の圧縮度をあげもとのサイズの0.3倍まで圧縮して調査した。他院施設のMRIはDICOMでの出力ができないため、スキャナーでスキャンする手間が必要であったので画像データは佐賀医科大学附属病院の患者およびボランティアを撮影し得られたDICOMデータ(15例:頭部および脊椎)を用いた。DICOMデータは市販ソフトによりパソコン上でJPEG形式に変換され0.3倍程度に圧縮された。これを協力施設間とISDNで結んだパソコン同士で転送を行いその時間を記録した。またハードコピーで指摘されている病変が0.3倍まで圧縮した画像で診断可能かどうかを検討した。 結果:低圧縮率での1例あたりの平均転送時間は30分22秒。この場合元画像にて指摘されている病変すべてが検出された。高圧縮率での1例あたりの平均転送時間は7分15秒であった。臨床上問題となる病変はほとんど診断可能であったが、微小な病変は診断困難だった。 考察:ISDNの転送速度からは日常臨床では高圧縮率のデータを用いるしかないこと、頭部MRIに限れば高圧縮率のデータでも診断に差し支えないことが判明した。高圧縮率では細かい病変は見落とされたことから腹部領域では高圧縮率のデータではあまり有用でない可能が高い。すでにISDNは時代遅れとなり、ADSLなどの広域周波数の通信が普及しており、今後はこれらを用いた画像転送の有用性の検討が必要である。
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