研究概要 |
【目的】artificial neural network (ANN)は、医学分野においてもデータ分類やパターン認識において応用されるようになってきた。我々はこのANNを胸部の高分解能CT (HRCT)におけるびまん性肺疾患の鑑別診断に応用を試みた。さらに、そのANNの結果を用いた読影実験を行い,"second opinion"としての読影者に対するANNの影響について検討した. 【対象と方法】ANNはHRCTから得られる23の所見と10の臨床データを入力層とし,サルコイドーシスや癌性リンパ管症など11の疾患を出力層として構成した.入力層におけるHRCT所見は8名の放射線科医が主観的なratingを行った.130の臨床例を用いてラウンドロビン法によるANNの学習およびテストを行った.読影実験に用いる症例は,130症例のうち45症例を選択した.読影方法は、ratingを行った8名の放射線科医が、まず10の臨床データとHRCTで各疾患のprobabilityの確信度をマークし,その後、読影者自身のratingに基づいたANNの結果を提示し、必要に応じて確信度を変更してもらった.ANNおよび読影者の診断能はROC (receicer operating characteristic)解析で評価した. 【結果】各読影者のratingに基づくANNの診断能は、Az=0.956であった。臨床データとHRCTのみを用いた読影者の平均の診断能はAz=0.972、臨床データとHRCTにANNの結果を加えた読影者の平均の診断能はAz=0.981で、読影者の診断能の有意な改善(p<0.005)が見られた. 【結論】胸部HRCTによるびまん性肺疾患の鑑別診断において,ANNは"second opinion"として有用であると考えられた.今後,さらなるANNの診断能の向上とデータベースの最適化をはかり、臨床応用を見据えた研究を続けていきたい。
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