研究概要 |
トロンボキサンA2(TXA2)は生体の一次止血機構を担う生理活性物質の一つであり、血小板放出反応、二次凝集の発現に重要な役割を果たしている。申請者らはTXA2とは正常に結合するが血小板凝集が惹起されない血小板機能異常症をトロンボキサン不応症と命名し、以前よりその病因及び病態解析を行ってきた。 その結果、本症はトロンボキサン受容体のfirst cytoplasmic loopのArg60→Leuの異常によりphospholipase C(PLC)への刺激伝達が障害されるもの(Bood 81:994,1993,J Clin In vest 94:1662,1994,Thromost Haemb 76:1080,1996)のほか、未だ病因が明らかでないものとして、PLC活性化とCa動員までは正常に惹起されるもの(Acta Haematol JPN 52:278,1989)、受容体の構造異常がないにもかかわらずPLC活性化が惹起されないもの(Gq蛋白の異常?、未発表)など病因が多様であることが判明した。申請者らは、トロンボキサン受容体のArg60→Leuの変異によって生ずるPLCへの刺激伝達障害に基づく病型をhomozygote例とheterozygote例について既に明らかにしているが、新たな病型として、Ca ionophoreによる凝集が惹起されない病型を見いだした。これらの症例(3例)は、トロンボキサン受容体の異常はなく、PLCの活性化や細胞内Ca動員も正常であり、47K及び20K蛋白の燐酸化も正常であることから、これらの蛋白燐酸化以降のシグナル伝達が障害されているものと考えられBritish Journal of Haematologyに報告した。また、新しいタイプのADP受容体として注目を集めているP2Y^<12>の異常でも同様の病態が起こる可能性があることから、細胞内cAMPの動態を調べ、この異常ではないことを、同じくBritish Journal of Haematologyに報告した。
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