研究概要 |
本研究ではvon Willebrand因子(以下VWF)と血小板膜糖蛋白GPIbの結合におけるVWFのコンフォメーション変化の本体を明らかにすることにより、血栓症発症のメカニズム、さらにはコントロール・治療に結びつく知見を得ようとした。まず平成12年度はFlanking regionの各領域、459-508,475-508,.497-508,696-709,459-508+696-709,475-508+696-709,497-508+696-709を欠失させたmutantをPCR法を応用して作成した。発現プラスミドを293T細胞に発現させ、良好な発現を得た。Mutantが正しい蛋白コンフォメーションをとっているかどうかをモノクローナル抗体パネルを確認した。以上の後平成13年度においてmutant蛋白質のGPlbへの結合能を、ristocetinおよびbotrocetinの存在下で検討、併せてモジュレーター非存在下での結合を検討した。497-508、696-709を欠損したものとR545のDouble mutantでは興味深いことに通常見られないモジュレーター非存在下での結合が出現した。以上のことより、VWF-GPlb反応の制御は、S-S結合ループ外側の領域とType 2B領域との協調により成立していると考えられた。次にこの結合に対して抗VWF抗体NMC4,Avw3が阻害を示し、結合がGPlb依存性のものであることを確認した。さらにFlanking regionの一部である505-506と539-543にエピトープを持つ3つの抗VWF抗体B328,B710,23C4の、696-709欠損Double mutantに対する阻害能が確認できた。Emsleyらによる1998年に発表されたhuman VWFの結品構造モデルを用いて解析したところこれらの抗体はN末端armのcornerに結合することによってVWFのコンフォメーション変化にロックをかけていると考えられた。
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