研究概要 |
我々は多くの白血病や骨髄異形成症候群(MDS)において核内タンパクWT1が高発現していることを見い出し,そのWT1を標的とした抗腫瘍免疫療法の確立を目指して研究をすすめてきた。すでに,我々は,ヒト末梢血リンパ球よりWT1特異的なCTLの誘導が可能であること,さらに,WT1ペプチドで免疫(vaccination)されたマウスは移植されたWT1高発現腫瘍細胞を高率に拒絶することを示してきた。 平成12,13年度は上記の研究成果をさらに発展させ,より強力かつ有用な白血病ワクチンの開発を目指すこと,および,できるだけ早期に実際の臨床応用に近づけることを目標に研究を進め,以下の結果を得た。 1)WT1タンパク全体を生体内で発現させることができれば,発現したタンパクは抗原提示細胞(APC)内でprocessingを受け多種類のペプチドがclass I, class II MHC分子とのcomplexとしてAPC表面に提示され,多種類のCD8^+CTLやさらにはCD4^+helperT細胞も活性化され,より強力な白血病ワクチンの開発につながると予想される。これを検証するために,発現ベクターに組み込んだマウスWT1cDNA全長をマウスに筋注し,生体内でWT1タンパクを発現させたところ,そのマウスは移植されたWT1発現細胞を高率に拒絶した。つまり,WTlDNAワクチンのマウスモデル系を樹立することに成功した。 2)WT1特異的CTLを誘導することがすでに示されているWT1ペプチド(9a.a.)のAnchor Motif部位の1つのアミノ酸を他のものに置換したWT1ペプチドを用いることにより,より強力なCTLをより高い確率で誘導することを試み,予想通りのHLA-A24.2拘束性の改変WT1ペプチドを同定することができた。この改変ペプチドは白血病やMDSに対する免疫療法の臨床応用に非常に有用と考えられる。 3)肺癌などの固形癌でもWT1を高発現するものが多く見られることを明らかにし,それらもWT1ペプチド癌ワクチンの標的となることを明らかにした。 4)造血器悪性疾患,肺癌,乳癌に対するWT1ペプチド癌ワクチンの第1相臨床試験を平成13年12月より開始した。
|