研究概要 |
胎生11日目背側大動脈由来血管内皮細胞株からクローニングした新規ケモカインWECHEは,卵黄嚢由来血管内皮前駆細胞の増殖および胎仔肝臓由来造血幹細胞の分化にたいして抑制的に作用することを,報告した.本研究は,WECHEの生体内における作用,特に胎生期における造血および血管新生にたいする作用について解析することを主たる目的に,アデノウイルスを用いたWECHEの強制発現およびWECHEトランスジェニックマウス(WECHE Tg)作製を行った. (1)chicken β-actinプロモーター制御下に発現するアデノウイルスベクターにWECHE cDNAを組み込み(以下Adeno-WECHE),マウス胎仔造血にたいする作用を検討したAdeno-WCEHEを経子宮的に胎生13日マウス胎仔に感染させ,胎生17日目の胎仔肝臓における赤芽球造血について検討した.組織学的解析により,Adeno-WECHEを感染した胎仔肝臓は,コントロール群(Adeno-LacZ)と比較して赤血球細胞の増加が観察されたAdeno-WECHE感染胎仔肝臓由来CFU-Eはコントロール群と比べ,2倍多く存在する事が明らかとなった.今後,その機構解明およびWECHEレセプターの探索に仕事を発展させていきたい。 (2)chickenβ-actinプロモーター制御下に発現するベクターにWECHE cDNAを組み込み,Tgマウスを作製した.その結果,僅か1頭にのみ,外来性のWECHE遺伝子を確認できた.その後,Tgマウスの各臓器におけるWECHE mRNAの発現を解析した結果,WECHE mRNAは発現していないことが明らかとなった。 次に,血管内皮細胞特異的なFlk-1プロモーターにWECHE cDNAをつないで、Tgマウスを作製することについて検討を行った。Flk-1-GFPTgマウスの解析から,GHP陽性細胞は,胎生10.5日の小血管を中心に発現していることが明らかとなった.今後,Flk-1-WECHE Tgマウス作製し,WECHEの生体内における血管新生にたいする影響を明らかにする.
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