研究概要 |
本研究課題により骨髄異形成症候群の発症と進展に関わる染色体遺伝子異常とその臨床的意義を明らかにした。その成果の要約は以下に示す3点である。 1、MDS85例を含む骨髄性白血病176例のうち、AML1遺伝子Runtドメイン内の点突然変異を5例(2.9%)で検出した。うち4例はde novo MDS症例で、いずれの症例においてもMDS診断時のDNA検体から異常が検出された。Silent変異の一例を除いて、他の4例ではframeshift変異が検出され、塩基欠失か挿入によりそれぞれでV93del、I150ins、I168ins、A120insを形成するものと推測された。AML1遺伝子の変異はMDSの発症・進展に関与する早期の分子機構の一つと考えられ、AMLに比較してframeshift変異が特徴的であることを指摘した。 2、DNA修復に関与する遺伝子群のMDSにおける変異を検索する目的で、DNA修復遺伝子群68遺伝子の1108エクソンのうち、924についてエクソンの塩基配列を決定する条件を設定した。DNAミスマッチ修復遺伝子群に属する6種(hMLH1,hMSH2,hMSH3,hMSH6,hPSM1,hPMS2)を対象に、悪性リンパ腫48例および骨髄異形成症候群48例、急性骨髄性白血病48例で変異の解析を行い、97エクソンのうち79エクソンで解析を成功し、リファレンスのゲノム情報との相違が146箇所でみられた。うち31箇所がcoding領域での変異であった(hMLH1:7箇所,hMSH2:1箇所,hMSH3:3箇所,hMSH6:2箇所,hPMS1:0,hPMS2:9箇所)。 3、MDSの予後因子としての遺伝子異常の重要性を指摘した。特にp53変異は重要で、多変量解析では国際予後スコアリングを凌ぐことを示し、スコアリングに遺伝子所見を加えることにより更なる改善が期待できることを提唱した。
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