研究概要 |
糖尿病性腎症の進展機序を解明するため、酸化ストレスの役割とラジカルの産生酵素の抑制により糖尿病性腎症の進展抑制ができるか検討した。ラジカル産生酵素としてNADPH oxidaseは細胞質成分のp47phox, p67phox, p40phoxと膜結合成分のp22phox, gp91phoxからなり、その腎内の局在を明らかにした。特にp47phoxはラジカル産生調節に重要であり、高血圧モデルの腎臓ではp47phoxの発現が増強していた。ストレプトゾトシン糖尿病モデルでも糸球体内皮細胞、糸球体上皮細胞にp47phoxの発現が増強した。NADPH oxidaseの産生するsuperoxideにより糖尿病ラットでは尿中および腎で過酸化脂質(LPO)が増加した。糖尿病初期では腎臓の内皮型NOSは増加を示し、NOおよびsuperoxideとの反応物peroxynitriteは細胞障害性が強く、近位尿細管のendocytosisを障害し、糖尿病性腎症初期の微量アルブミン尿の機序の一部にラジカルが関与することを示した。 NADPH oxidaseはangiotensin IIにより発現が増強し、糖尿病性腎症をACE阻害薬およびAT1受容体遮断薬で治療するとNADPH oxidaseは抑制されラジカル産生は減少し、尿蛋白は減少した。ACE阻害薬およびAT1受容体遮断薬の腎保護作用の一つの機序としてNADPH oxidaseの抑制によるsuperoxide産生抑制が関与している。また糖尿病性腎症で接着分子セレクチンの重要性を示し、抗血小板薬ジピリダモールはNADPH oxidaseの発現を抑制し、NOSを増強しAEC阻害薬との併用でラジカル産生抑制とともに糸球体微小循環を維持に働く。 今後、糸球体上皮細胞のNADPH oxidaseをより特異的に抑制し、糖尿病性腎症の進展を抑制する治療法を開発したいと考えている。
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