研究概要 |
本研究においては、第一に培養細胞及び急性腎不全ラットを用いて、尿細管細胞の細胞周期の調節メカニズムを明らかにし、細胞周期調整遺伝子のなかでどの因子が、尿細管細胞の増殖調節に重要な役割をしているかを解明した(文献1,2,4)。 第二にアデノウイルスベクターやエレクトロポレーション法などを使用して、急性腎不全ラットにin vivoで腎尿細管細胞内に細胞周期調整遺伝子を導入し、急性腎不全の新しい遺伝子治療法を開発した(文献3,5)。 第三に急性腎不全後の細胞増殖のkey factorとして、急性腎不全後の尿細管細胞の再生因子としてWnt4に注目した。Wnt4は、胎生期に腎に発現し、metanephric mesenchymeの分化に必須な遺伝子である。急性腎不全ラットにおいて、虚血、再灌流後6時間より、近位尿細管において発現が上昇することを報告した。Wnt-4の発現部位はAquaporin1の発現部位と一致しており、近位尿細管を考えられた。またWnt-4は、PCNA陽性細胞に発現しており、in vivoで、増殖している細胞に発現していると考えられた。Wnt4を尿細管細胞に強制発現させたところ細胞周期調整遺伝子であるcyclin D1,cyclin Aの転写活性と蛋白発現が上昇し、細胞増殖が認められた。以上のことからWnt4は急性腎不全の回復期の細胞増殖のkey factorの一つと考えられ報告した(文献6)。
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