研究概要 |
1、酵素による糖鎖改変IgA1は"Sticky"な性質を示し、自己凝集現象とともに、血清中のIgG1,IgG3,IgM, IgA, C3等のタンパク質と結合する性質を獲得することがわかった。 2、血清中の結合タンパク量には健常者と患者で違いはないが、IgA含量はIgA腎症患者で有意に高く血清中に糖鎖不全によると思われる異常分子が1ml当たり数マイクログラム程度存在することが示された。 3、IgA腎症患者のIgA1はウサギで作成した合成ヒンジペプチドに対するポリクローナル抗体との反応性が高く、患者で糖鎖不全による裸のヒンジを有するIgA1の血中濃度が高いことが証明された。一方、患者の血清中にはこのヒンジペプチドを認識するIgG, IgM抗体が存在し有意に高い値を示すことが明らかとなった。 4、IgAlの重鎖よりトリプシン分解によりヒンジを切り出し質量分析にかけた結果グリコフォームに関し21種類の糖ペプチドが得られた。ESI-MSによる定量の結果、IgA腎症患者の血清IgA1で有意な分子量低下が観察され、糖鎖不全を示した。 5、IgA腎症患者の腎生検組織から糸球体を分離し、IgAを抽出、上記方法に従いヒンジの構造を質量分析で分析した結果、沈着IgAlの著しい糖鎖不全が検出された。 6、IgAlのヒンジ糖ペプチドをキャピラリー電気泳動で分析した結果、凝集性のIgA1はシアル酸に関し糖鎖不全を示すことが明らかとなった。 7、糖鎖改変モデル分子をラットの腎動脈に投与し沈着現象を検討した結果コントロールに比し糖鎖改変IgA1で強い沈着を示した。また沈着とともにラットの糸球体に炎症性の反応を引き起こすことも明らかとなった。
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