研究概要 |
本検討ではアンジオテンシンII(AII)の1型受容体(AT1)および2型受容体(AT2)が細胞外基質の重要な構成成分であるコラーゲンとプロテオグリカン産生に与える影響をAT2受容体を発現する培養血管平滑筋細胞を用いて検討した。AT2受容体の単独刺激ではERK1/2は変動せず、PTPはコントロールの67±11%に低下した(p<0.05)。AT2受容体刺激後は細胞付着型コラーゲン、分泌型コラーゲン合成共に容量および時間依存性に増加した(10-7M,48時間でコントロールの148±17%,p<0.05)。次にAIIがAT1受容体を介して培養血管平滑筋細胞(VSMC)のプロテオグリカン産生を濃度および時間依存性に増加させることを示した。産生されたプロテオグリカンをDEAE-Sephacelで分離した結果、CS/DSPGならびにHSPGに相当するピークの増強を認めた。またノーザンブロットではバイグリカン、パールカン、バーシカンmRNAの有意な増加を認めた。一方、AT2受容体のみを刺激するとプロテオグリカン産生が増加したが、その作用はチロシンキナーゼ抑制剤およびMEK阻害剤に抑制されなかったが百日咳毒素により抑制された。In vivoの検討ではSHRSPラットにARBを投与した結果、SHRSPラット腎におけるバイグリカンとデコリンのmRNA発現の減少、バーシカンのmRNAの増加を認めた。以上より、AT1とAT2受容体が複数の機構により各種細胞外基質蛋白の発現調節に関与していることがin vitroおよびin vivoの成績より示唆された。
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