研究概要 |
我々は活性酸素によるDNA損傷産物と慢性合併症の関連性を明らかにしてきた.活性酸素によるDNA損傷産物は多種同定されている.しかし,測定法の煩雑さから糖尿病で詳細に測定した報告はなく,糖尿病における活性酸素によるDNA損傷の特徴はわかっていない.本研究では,酸化障害DNA塩基測定法を開発し,糖尿病における酸化的DNA損傷の特徴を明らかにし,かつ酸化的DNA損傷マーカーと糖尿病性慢性合併症の関連を明らかにすることを目的に実施された. 1.GC-MS(gas-chromatography/mass spectrometry)測定法の開発 人工的な酸化的DNA損傷を最小限にするために,ヒト組織よりDNAをethanethiol存在下に抽出,RNAase処理後,DNAを水解,トリメチルシル誘導体化,GC-MSにて解析した.pyrimidine oxidation products, purine oxidation products, base deamination products, base chlorination productsを同時に分腹測定できた.糖尿病で特異的に増加する酸化的DNA損傷分子種を同定した.糖尿病における酸化的遺伝子損傷マーカーの特異的診断法を開発した. 2.糖尿病合併症と酸化的DNA損傷との関連性 糖尿病合併症の発症・進展と酸化的DNA損傷蓄積との関連性をprospectiveに検討し,酸化的DNA損傷と糖尿病性腎症の進展との関連を明らかにした(Diabetologia, in press).また糖尿病性網膜症の進展との関連性を明らかにした. 本研究により,新しい酸化障害DNA塩基測定法が開発され,糖尿病における酸化的DNA損傷の特質が明らかになった.糖尿病性合併症の成因における酸化的DNA損傷の役割が解明されることが期待される.
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