研究課題
基盤研究(C)
1型糖尿病感受性MHC分子によってペプチドとして提示される膵ラ氏島由来の抗原を同定し、この抗原に対する1型糖尿病患者の自己免疫反応を調べることを目的とした。1型糖尿病患者末梢血よりB細胞株を作製し大量培養を行った。胎児膵ラ氏島細胞株の破砕物をパルスして、アフィニティークロマトグラフィーにてHLA-DR、HLA-DQ分子を得、トリフロロ酢酸処理、限外濾過の後、逆相HPLCにかけた。このパルスにより特異的に現れたHPLCのピークよりアミノ酸14個よりなるペプチドを同定した。ホモロジー検索でこのペプチドはHeparan sulfate/Heparin Interacting Protein(HIP)に由来していた。胎児膵ラ氏島細胞株mRNAよりRT-PCRにてこの蛋白のcDNAをクローニングし、大腸菌にてHis-tag蛋白として発現させた。ニッケルカラムで精製の後、ウエスタンブロッティングに供し1型糖尿病発症時におけるこの蛋白に対する自己抗体の有無につき検討した。2例の1型糖尿病発症時の血清と2例の正常対照の血清を用いウエスタンブロッティングを行ったが、この蛋白はバンドとして染まらず、ウエスタンブロッティングでは自己抗体は検出されなかった。これは1つにはHIP自体はT細胞のepitopeであって、T細胞によるepitopeの認識から抗体の産生まではイベントとしては隔たりがあること、また細胞性免疫の抗原であり自己抗体の産生とは無関係であること、あるいは、自己抗体はlinear epitopeよりもconformational epitopeを認識することが多いのでウエスタンブロッティングでは検出し難いという可能性も考えられる。この点については今後immunoprecipitationなどを行い、またT細胞の反応をHIP蛋白あるいはペプチドを用いておこなってゆく予定である。