研究概要 |
1 chimerismを誘導するための脾細胞と骨髄細胞の至適割合の検索 これまで通常の報告ではマウスでは30x10^6個以上の骨髄細胞が投与されないとドナー特異的免疫寛容を確立するための有効なchimerismを作成できなかったが,これに10x10^6以上の脾細泡を混入することで,報告されている1/10の量である3x10^6個の骨髄細胞で有効なchimerismが作成された.この研究成果により,ごく少量の骨髄細胞を用いたchimerismの誘導が可能であることが判明した.また,脾細胞分画をT-cell-enrich, B-cell-enrich, macrophage-depletedに分け,それぞれの役割を検討したところ,T-cell-enrichでより有効なchimerismが作成された.すなわち脾細泡の内T-Cellがこchimerismの成立に大きな役割を果たしていることが判明した.またmacrophage-depletedでも通常の脾細胞を混入した場合と同様にchimerismが作成された.これらに加えて,macrophage-depleted群でGVHDが生じる頻度が有意に減少したため,macrophageがGVHDに対する関与が示唆された. 2 抹消血幹細胞移植との組み合わせの検討 この脾細胞を混入したchimerism成立を臨床的に応用するために,ドナーに大きな負担となる骨髄移植を回避する目的とし,抹消血幹細胞移植との組み合わせの可能性を検討した.すなわちG-CSFをドナーマウスに投与し抹消血幹細胞を採取し,骨髄細胞と同様に脾細胞と組み合わせて投与した.この研究において通常1匹から採取される抹消血幹細胞では成立しなかったchimerismが脾細胞との混入により作成された.これにより,実験的な意味合いが強かった骨髄細胞移植との併用によるキメラ作成技術において,より臨床的応用が可能であることが示唆された. 3 GVHD抑制に関して 上記の実験系では少数ながらGVHDが発生することから,その抑制が急務となる.基本的にはGVHDの成立にはT-cellがその大きな役割を果たしていると考えられる.しかしながらT-cellはchimerismの誘導にも大きく関与している研究成果が得られているため,T-cellを除去せずにGVHDを抑制する方法の開発が今後の課題である.
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