研究概要 |
今回はラットのTF mRNAを標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)を作製し,ラット肝虚血再灌流障害モデルに投与しその効果を検討した.ラットTFの開始コドンに対応してantisense (AS)-1,-2/TFを作製した.比較対象ODNとしてsense control(S)/TF, scrambled control(Sc)/TFを作製した.雄Lewisラット(230〜280g)に上記ODNを2.8mg/kg静脈内投与し10時間後に全身麻酔下開腹,肝臓の70%にあたる正中葉,左葉,尾状葉にいたる肝動脈と門脈を3時間クランプしたのち再灌流し,5日間生存率を比較した.また正常ラットにfluorescein isothiocyanate (FITC)で標識したAS-1/TFを投与し,0,6,10,24時間後に肝臓を摘出し肝組織内への取り込みを蛍光顕微鏡で観察,検討した.5日間生存率は無投与群では10匹中1匹(10.0%)だったのに対しAS-1/TF投与群では7匹中6匹が生存(83.3%)し改善が認められた.コントロール群では改善は認められなかった(p<0.05).ALT, HA, TATは各群で5時間後に最高値となり,AS-1/TF群で有意に改善していた(p<0.01).虚血肝組織は5時間後では無投与群,S/TF群,Sc/TF群でHE染色上肝細胞の局所的壊死が観察された.免疫組織学染色ではTFが類洞上皮細胞上で強く染色されたがAS-1/TF群では肝細胞壊死やTF染色はほとんど認められなかった。12時間後においては前3群では壊死がさらに進行しTF染色もより明瞭であったが、AS-1/TF群では壊死もTF染色も進行していなかった.FITC標識AS-1/TFは投与直後では肝組織内にほとんど認められなかったが6時間後には血管内皮に局在しており一部は肝細胞内にも取り込まれていた.10時間後には認められなくなったが,血管内皮への取込みは認められ24時間後でも同様てあった.
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