研究概要 |
死戦期を経た心停止ドナーから得られたグラフト肝は,通常の冷阻血障害に加えて,不安定な血行動態や心停止に伴う温阻血障害や救命処置施行時のカテコーラミン等の薬剤による障害が加わっている。本研究では,これまでに我々が行ってきたadenosineやprostaglandin等を用いて,このようなグラフトの保護法の開発を試みた。 まず,イヌを用いてadenosineやprostaglandin E1の肝動脈,門脈,上腸間膜動脈内投与による肝血行動態の変化を観察し,至適投与量を決定した。次にカテコーラミンによる肝障害モデルとしてdopamineを門脈内に投与するモデルを作成し,adenosineやprostaglandin E1の肝動脈内投与により本肝障害が軽減されることを見いだした。 一方,イヌ全肝の2時間温阻血障害がadenosineの門脈内投与により改善されることを見いだした。さらに,1時間の温阻血と1時間の冷阻血を加えたイヌ自己部分肝移植モデルを作成し,prostaglandin E1の門脈内投与が有効であることを見いだした。さらに,アデノシンによる肝保護効果はphosphodiesterase(PDE)type III inhibitorにより増強されること,そしてこれは細胞内cAMP, cGM2P,およびnitric oxideを介した反応であることを発見した。 これらの成果を組み合わせて用いることにより,死戦期を経た心停止ドナーからの肝移植の成績を向上させ得ることが期待させる。
|