研究概要 |
【目的】我々は癌細胞表面に発現しているファイブロネクチン(FN)には二つのヘパリン結合部位が存在することに着目し,FN発現癌細胞ではヘパリンがこの結合部位と反応することにより細胞にシグナルが伝達され抗腫瘍効果が発現するのではないかとの仮説をたてた. 【結果】1.FN発現細胞でヘパリンによる細胞死が観察され、かつこの効果がヘパリンとFNのヘパリン結合部位との相互作用により発現することが、胃癌STKM、乳癌BSMZ、甲状腺癌SW1736それぞれの細胞株にヘパリン、あるいはFNのヘパリン結合部位に対する抗体(IST-1,IST-2)を比例した濃度で添加した後、細胞の接着能、生死をcolorimetric assay、thymidine incorporate assayにより測定した結果確認された。 2.次に細胞死を誘導し得た細胞群に対し、その細胞死がアポトーシスなのかネクローシスなのかを検討するため、500IU/mlのヘパリンを細胞に添加し細胞の形態変化を認めた後細胞を回収し、DNA Laddering法、TUNEL法を施行した結果その細胞死がアポトーシスであることが判明した。 3.ミトコンドリアに存在するアポトーシス抑制遣伝子の一種であるbcl-2,bcl-XLを、FN発言癌細胞にそれぞれ遺伝子導入後、ヘパリンを投与したところ、アポトーシスが抑制された。 4.同様に経路を倹討する目的でヘパリンによりアポトーシスを誘導した細胞の蛋白を抽出し、caspase-3,8抗体を使用しWestern blotting法で検討したところcaspase-3の発現が認められた。
|