研究概要 |
マウス同所性肝移植モデルでは,ほとんどのアロ抗原の組み合わせに対して免疫寛容が成立することが明らかとなっている.今回,免疫寛容状態に特異的な遺伝子を同定するために,アロ特異的免疫寛容状態が成立したマウスの肝臓からcDNAを抽出し,DNAチップを用いて解析した.その結果,secretory leukocyte protease inhibitor, lynmphotoxin B, rpt-1,CD24などの免疫反応と深く関わりのある遺伝子が同定された.また従来の研究から,移植後長期にわたり移植肝中にはドナーとレシピエント双方のMHC class I抗原をもつ細胞集団が同定されている.今回はその細胞集団をcell sorterを用いて回収し,ドナータイプ,レシピエントタイプのMHC class I primerを用いてPCRによりその有無を確認した.その結果,レシピエントタイプのMHC class Iは検出されたが,ドナータイプは検出されなかった.またその表面マーカーの解析の結果などから,double positive cellは移植肝内に遊走したpremature dendritic cellが移植肝内で産生される可溶性MHC Class I抗原分子をトラップしてdouble positive cellどなり,移植肝の生着と免疫寛容の誘導をしていると考えられた.さらに免疫寛容を誘導していると思われる可溶性MHC分子作製のために,MHC class Iの細胞表面部分であるα1,α2,α3ドメインとβ2ミクログロブリン部分をpichia vector pPIC3.5にて構築し,Pichia.pastorisに形質転換した.現在はその発現タンパクの調製をおこなっているところであり,作製した可溶性MHC分子はnaive mouseに持続投与し,その免疫寛容誘導能を皮膚移植の生着を指標として検討する予定である.
|